大庭のエッセイ


「ごみ分別収集が教えてくれるもの」


  昭和58年の初当選当時、私の後援会に寄せられた意見の中には次のような意見があった。
「自治会における分別収集を無くして欲しい、もし、それが出来ないのであれば、せめて分別の種別を減らして欲しい」「分別回収は面倒くさい、何とかならないか」 などなど・・・ 始まったばかりの分別収集になじめない市民から、新人議員の私に寄せられた率直な意見である。

 私が議員活動している袋井市では、昭和56年度、この1年間を、ごみの分別収集試行期間と位置づけ、2自治会を対象にテスト収集し、結果良好との判断から、昭和57年より市全域118自治会を対象に分別収集導入となった。この取り組みは全国的にも先駆的と評価され、分別収集では有名な沼津市(沼津方式)にも勝るとも劣らない先進市として、高く評価されてきた。
 今日でも、その評価は変わらず、昨年、旧厚生省、水道環境部リサイクル推進室が容器包装リサイクル法のまとめとして編集された分別収集事例集にも袋井市のことが取り上げられている。全国3,300余の自治体の中で、モデル自治体として取り上げられたことは大変名誉なことであり、一市民としても嬉しい限りである。

 ちなみに、全国モデルケースとして取り上げられているごみ収集概要とは、その一端を紹介させていただくと
分別は実に16種類に及んでいる。 @生ビン(一升ビンなど)をはじめA無色ビンB茶色ビンC青色ビンD緑色ビンE黒色ビンなど雑ビン、また、金属類もFスチール缶Gアルミ缶H金属類I小型電化製品J乾電池・蛍光管など、さらにプラスチック系ではK発泡スチロールトレーLプラスチック類MペットボトルN埋立てごみ等、これ以外にも資源回収の名のもと地域のPTAなどが中心になって、新聞や雑誌、段ボール類など、その回収にあたっている。

 この分別収集には市内152カ所の収集場所を定め、地域の自治会役員、をはじめ、市が委嘱している環境保全対策指導員、や推進委員がこれにあたっている。ちなみに、市からの分別奨励金は1自治会あたり21,600円+180円*世帯数となっており、仮に100世帯の自治会でも、年40,000円足らずと決して充分な金額となっていない。まさに、お金に換えることが出来ないボランティア活動である。

 ところで、今でこそ、「分別収集は地球に優しい活動」「分別は市民意識のバロメーター」などとも、言われもするが、20年前、財政的にゆとりのある自治体は、分別をせずにごみを回収し、大型の機械を導入し、清掃工場に搬入するだけで、破砕機で一瞬にして粉砕、電磁石等で金属、非金属の選別をし、一部を有価物としてリサイクルする他は、焼却か埋立、いずれかに限られていた。また、この方法が、当時としてはもっとも合理的?な処理方式として評価もされていた。

 今日では、分別はごみの排出抑制効果のみならず、実際、分別の種別を増やせば増やすほど減量に貢献できることもデータから判ってきている。しかし、当時の使い捨て全盛期の環境下では、手間暇のかかる分別収集などもってのほか、お金を掛けても市民の利便を追求すべき、 との考えが大勢を占めていた。今思えば、こうした当時の背景が、大庭後援会への前段の投書となって送られてきたものと思う。

 住み良いまちづくり、その基本に、市民一人ひとりの快適性、合理性、便利性の追求は何時の世にも不可欠だと思う。しかし、そうした視点は、ともすれば、「自分さえ良ければ」に陥りがちで、人や自然、地球と共存する社会にあっては、「自分中心」の視点から、生かされる自分、この地球上に生かさせていただく自分、さらには周りと調和する、という謙虚な視点を持つことも重要な事と思う。 まさに、昨今のごみ分別収集はそのことを教えてくれているような気がする。    2001.7
 



詳細はohba@mxu.mesh.ne.jpまで。


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